酵母に外来遺伝子を導入して、培地に加えたチミジン誘導体をDNAに効率よく取込むことのできる株を作成した。DNAに取込まれたチミジン誘導体は、その誘導体に特異的に反応する蛍光標識した抗体を用いて、それらをfocusとして顕微鏡下で観察することができた。この系を用いて減数分裂期組換えに伴って起こるDNA合成(MRDS:Meiotic Recombination DNA Synthesis)を酵母で初めて検出し、そのMRDSについて以下のことを明らかにした。 1.減数分裂期組換え欠損変異株(spo11Δ)と野生型株を対比して、減数分裂期に導入後、3時間以降にチミジン誘導体を培地に添加するとDNA複製とは区別してMRDSを特異的に標識できることを発見した。 2.MRDSが行われる時期は、組換えに関与する蛋白質Rad51の解離の後、シナプトネマ複合体形成の直前か形成時であった。 3.MRDSの行われる場所は、DNA combing法にFISHを組合わせた方法を用い、 (1)DNA二重鎖切断の起こる組換えのホットスポット領域に集中していること、 (2)DNA二重鎖切断のどちら側かに存在するか、または切断部位をまたいで存在するものもあることを明らかにした。 (3)野生株ではどちらか片側に存在するものが、交叉型組換え欠損株(mer3Δ)において切断部位をまたいで存在するものが多いことを明らかにした。それぞれ交叉型組換え、非交叉型組換え由来のMRDSと考えられ、これらのMRDSの存在様式は、現在主流となっている組換えモデルの直接的な証拠となる。 4.野生株のMRDSの長さは、1-2kbのものが大部分であった。また交叉型組換え欠損株(mer3Δ)では1kb程度とMRDSの長さが短いことがわかり、MRDSの長さと組換えの種類の関係を論じることができた。
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