研究概要 |
蛍光相関分光法はこれまで細胞内の微環境を解析できる手法として用いられるようになってきた。これまで多くの研究ではFCSの測定で得られる分子の動きの成分は最大3つであると仮定してきた。ところで細胞の中でのタンパク質や分子の動きを示すのに、平均値などの一つの代表値だけで十分なのであろうか?細胞の中は様々な構造体を有し、その分布も様々であろう。また、同じ場所でも時間によっても変化していることが予想される。これまでの3成分解析を一挙に多成分に拡張するには、これまでの方程式の成分を単純に増やすのではなく、新たなアルゴリズムを導入することが必要とされる。そこで我々は散乱測定に既に用いられ数々の成果を上げているCONTINを利用した。初年度は解析法の開発を行い,2年度はモデル系で得られた測定データの解析を行い,モデルと結果の間の関係を明らかにしつつ,さらなる解析法の確立を行った。 測定した系は、蛋白の凝集体をモデルとして、アミロイドベータ蛋白質の一部を利用して凝集過程を解析した。時間とともに凝集する過程を分布関数として解析し、表現することができた。蛍光標識オリゴDNAを細胞内に導入してオリゴDNAの動きを拡散時間の分布で解析した これまでのような2種類の拡散定数(または拡散時間)とその割合という単純な表現ではなく、二つのピークを中心に様々な動きを持った分布をしていることを示している。溶液の中の拡散運動とは異なり、細胞の中ではひとつの分子種でもその動きには幅があることが予想され、分布関数として表現するのが妥当だろうことが示された。今後は,さらに,この手法を空間相関へと展開し,新たな細胞像を構築したいと考えている。
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