研究概要 |
本研究では、嗅覚順応行動における、進化上保存された細胞極性ネットワークの重要性を実証するため、2つのモデル生物(酵母と線虫)を使って研究している。本年度は以下の知見を得た。 1.酵母の細胞極性ネットワークの解析 細胞極性ネットワークに重要な新規分子として、分裂酵母の進化上保存されたMO25蛋白質Pmo25を同定した。Pmo25は、細胞極性ネットワークの最上流で機能し、細胞質分裂後の細胞分離と成長極性制御(確立と維持)に重要であることが判明した。また、Pmo25は、M期中心体から細胞質分裂面に局在変化し、この局在は、細胞質分裂の開始を制御するSIN(Septation Initiation Network)の制御下にあることがわかった(M.Kanai et al., EMBO J. 2005)。 2.線虫の嗅覚順応変異体の解析 すでに取得している、嗅覚順応変異体の原因遺伝子の一つを同定した。表現型の解析より、本遺伝子は、感覚神経AWCが関与する嗅覚順応行動に特異的に重要であることが示唆された。さらに、既存の変異体との遺伝的相互作用を調べたところ、GTP-binding proteinと機能関連することが示唆された。なお、本変異体の神経突起を調べたところ、神経突起形成そのものは正常であった(投稿準備中)。 3.線虫の嗅覚順応行動におけるSAX2の役割 細胞極性に重要な酵母Mor2の線虫におけるホモログ・SAX2について、複数の誘引物質を使用した特異的感覚神経が関与する、嗅覚順応行動を網羅的に解析した結果、感覚神経AWCが関与する嗅覚順応行動に特異的に重要であることが示唆された。
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