研究概要 |
本研究では、嗅覚順応行動における、進化上保存された細胞極性ネットワークの重要性を実証するため、2つのモデル生物(酵母と線虫)を使って研究している。本年度は以下の知見を得た。 1.酵母の細胞極性ネットワークの解析:これまでに、分裂酵母の細胞分離と細胞極性制御に重要な形態形成ネットワークMOR(Morphogenesis Orb6 network)を同定し、 MORが細胞質分裂の開始を制御するSIN (Septation Initiation Network)の制御下にあることをつきとめている(M. Kanai et al.,EMBO J.2005)。本年度は、引き続き、SINによるMORの制御機構について解析し、MORの最上流分子Pmo25に結合するkinase活性が、Nak1/MORとSid1/SINの二つのkinaseに依存することを見出した(K.Kume et al.,Biosci. Biotech. Biochem.2007)。 2.線虫の嗅覚順応変異体の解析:これまでに、GTP結合タンパク質の情報伝達経路の制御分子が、嗅覚順応行動に重要であることを見出している。本年度も引き続き、その情報伝達経路について解析を進めた結果、最下流で機能する分子として、神経伝達物質の放出を制御する分子に到達した。現在、神経伝達物質の特定を目指し、解析を進めている(投稿準備中)。 3.線虫の嗅覚順応行動におけるSAX2の役割:細胞極性に重要な酵母Mor2の線虫におけるホモログ・SAX2について、複数の誘引物質を使用した特異的感覚神経が関与する、嗅覚順応行動を綱羅的に解析した結果、感覚神経AWCが関与する嗅覚順応行動に特異的に重要であることが示唆された。そこで、SAX2と上記のGTP結合タンパク質の情報伝達経路との機能的関連性について調査したところ、両者が共通の情報伝達経路を構成することが示唆された。
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