ポストゲノム時代に入り、生細胞で蛋白質の機能を解明することの重要性が増してきた。現在、蛋白質の機能解析には、細胞全体の蛋白質発現を低下させる、遺伝子ノックアウト法やRNAi法が広く用いられている。一方、単一の蛋白質が細胞内の異なった領域や細胞周期の特定のステージで、独自の機能を果たすことも分かってきた。しかし、従来の蛋白質の機能阻害は細胞の全体で起こり、特定の領域やステージでの蛋白質の機能を解析することは困難であった。われわれは、生細胞局所における蛋白質機能を明らかにするため、外因性に発現させた蛍光蛋白質EGFPとの融合蛋白質を機能阻害のターゲットとする多光子CALI(chromophore-assisted laser inactivation)を開発し、外因性EGFP融合蛋白質の機能を任意の領域と時点で選択的に阻害可能であることを報告してきた。今年度は、多光子CALIにより、内在性蛋白質の機能阻害が可能であるか否かを明らかにすることを目的として研究を行った。ギャップ結合は、隣接する細胞同士のコネキシン蛋白質(CX)の6量体が結合することによって形成される。そこで、元々ギャップ結合を有しないHeLa細胞に、野生型Cx43発現ベクターとCx43-EGFP発現ベクターとを同時に遺伝子導入を行い、多光子CALIによる機能阻害を解析した。この結果、Cx43-EGの存在下では、野生型Cx43の機能阻害が観察され、多光子CALIにより、内在性蛋白質の機能阻害が可能であるが分かった。
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