本課題では哺乳類細胞を用いて、客観性のあるオートファジーの定量的評価方法を開発することを目的としている。昨年度から試みているpH感受性色素(CypHer5)で細胞質からリソソームへの移動を追跡する方法を今年度さらに検討を重ねた。CypHer5をBSAやIgGなどのタンパク質に共有結合させ、これを細胞質にマイクロインジェクションした。その結果、リソソームへの移動がかなり抑制されたが依然としてマクロオートファジー非依存的にリソソームへ到達してしまうことが結論された。現在ワルトマニンなどのPI3K阻害剤などを用いて、ミクロオートファジーの関与などをさらに追求している。 現在のオートファジーの定量的解析の問題点のひとつとして、オートファジーの理想的な阻害方法がないことがあげられる。そこで、私たちはAtg5ノックアウトマウスに由来する線維芽細胞を利用して、テトラサイクリンによる遺伝子誘導系を利用して、「突然」オートファジー能を欠損あるいは回復できる細胞株を作製した。例えばこれを用いることによってオートファジーは通常の培地で培養している限り細胞の大きさにはほとんど影響しないが、栄養飢餓による細胞萎縮には正の関与をしていることなどを明らかとした。 また現在多くの研究においてLC3というオートファゴソーム膜タンパク質の挙動でオートファジーの活性が評価されているが、LC3の標識が真のオートファゴソームを示すだけではなく、単なるタンパク質凝集に非特異的に含まれてしまう場合があることに気がついた。そこでこの方法の問題点と対応策についても論文発表を行った。
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