研究課題
脊椎動物の複雑な発生現象を調べるためには、突然変異体の単離からスタートする順遺伝学的方法が依然として非常に有効である。我々の研究室では、2001年度よりENUミュータジェネシスによる突然変異体スクリーニングを行った結果、特定の器官の発生に異常を示す有用な変異体約40系統が単離されている。しかしメダカを含む多くの下等脊椎動物では、母性因子の影響(母性効果)が発生の比較的後期まで残ってしまうため、変異体によってはホモ胚であっても初期発生における表現型が抑制されている。特に卵内に蓄積するたんぱく質に対しては、アンチセンス法の効果がなく、変異体の表現型解析が困難となる場合が多い。そこで本研究では、母性効果のない突然変異体(maternal zygotic(MZ)mutant)を作る技術の開発を第一にめざしている。平成17年度は、メダカ胚の胚操作法や生殖細胞の移植方法を検討し、卵黄がきわめてこわれやすいメダカにおいて初期胚の細胞移植操作が確実に行える技術を確立した。平成18年度は、実際に野生型ホストの生殖細胞とfgfレセプター1変異体の生殖細胞を入れ替えることによってMZ変異体を得ることに成功し、それを使って初期胚におけるfgfレセプター1の機能解析を行った。野生型ホスト自身の生殖細胞を欠失させる方法として、ニホンメダカ(Oryzias latipes)と東南アジアに棲息する近縁種であるハイナンメダカとのF1雑種胚の不稔性を利用した。しかし、この方法ではホスト胚の稔性が成熟後1ヶ月しか続かないという事が明らかとなり、新たな方法を開発する必要が生じた。そこで、18年度の繰り越し課題として、生殖細胞の分化・維持に必須の遺伝子deadendのアンチセンスホリフォリノによってホスト胚の生殖細胞を欠失させる技術を開発し、この技術が有用であることを示した。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件)
Development 135
ページ: 281-290