本研究では自家受精魚R.marmoratusで、変異体作成系及びその後の原因遺伝子特定の基盤を作ることを目的とし、平成17年度は以下の実験を行った。 a.mutagenesis: ENUを後期胚とふ化直後の稚魚に処理しパイロット実験を行っている。今後F1及びF2にて、顕微鏡下で目に見える変異体のスクリーニングを行う予定。特に性分化関連変異体(純粋雄や純粋雌)には注目する。 b.この魚は現在、7-8系統が維持されており、それらはすべて系統内ではクローン(純系)で、各系統間にはDNA fingerprintで検出可能な多型が認められる。今回fingerprintに加え、さらに簡便なRAPDを用い各系統の違いを正確に記述した。さらに各系統間の関係を多種の遺伝子(下記d参照)を用い調べる予定。 c.予備実験でふ化前後の胚をメチルテストステロン(MT)処理し、純粋雄の誘導が確認された。今回正常hermaphroditeとの発生過程の違いを組織学とマーカー遺伝子の発現で解析した。正常ではふ化後すぐに卵形成が始まり、ふ化後2か月より生殖巣の最背部の限られた部位で精子形成が始まる。MT処理群ではふ化後の卵形成がすぐに停止する。その後精原細胞の増殖を経て、正常より早く、ふ化後1.5か月より精子形成が始まる。これらの変化に呼応し、卵母細胞マーカーfigalphaと精巣体細胞マーカーdmrt1の発現が変動することがわかった。 d.Jae-Seong Lee(韓国)との共同研究として、正常hermaphrodite生殖巣及びMTにより誘導された精巣のcDNAライブラリーを構築し、EST projectを始めた。
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