研究概要 |
本研究の対象生物であるオタマボヤは、発生生物学的にユニークな特徴を備えており、将来有望な実験動物となることが期待される。しかし、これまでオタマボヤの胚発生の解析はほとんど行われておらず基礎的データが欠けている。そこで本研究では、ワカレオタマボヤ(Oikopleura dioica)の胚発生を詳細に記載し基礎的解析を行うことを目的とした。この研究によって得られた胚発生に関する詳細な情報は、将来的に多くの人々にとって有益なデータになると考えている。 本年度は、(1)初期卵割過程の卵割パターンの観察・記載、(2)各発生段階の形態の記述を行った。初期卵割過程の卵割パターンの観察・記載では、まず微分干渉顕微鏡を用いた写真撮影とタイムラプスビデオ撮影により、受精卵から32細胞期までの卵割パターンと割球配置の観察および記述を行った。次に、細胞膜染色を行い共焦点顕微鏡で、受精卵から32細胞期までの各ステージで3Dイメージを作成した。これらの結果、以前からの初期卵割過程の理解に一点誤りがあることが明らかになった。Delsman(1910)によると16細胞期から32細胞期への卵割時に植物極側後方の細胞は分裂しないとされていたが、私たちの観察の結果、16細胞期から32細胞期への卵割時にこの細胞は著しい不等分裂をして小さい割球と大きい割球に分裂することが分った。このことは、類縁のマボヤの卵割と比較して興味深い。各発生段階の形態の記述については、尾芽胚・幼生(ステージ1,3,6)・成体の構造を観察し連続切片を作成することにより、詳細な観察・記載を行い、基礎的データを収集した。
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