研究概要 |
【研究の目的】 本研究課題では,環境刺激やテクノストレスに対する,ヒトの自律神経反応や適応能力の生理的多型性について研究するための新しい指標として,皮膚血流リズムの評価法を確立する.皮膚血流リズムとは,レーザードップラー皮膚血流計にて計測される0.1〜0.2Hz周期の変動であり,皮膚表面から簡便に計測できる. そこで本研究課題では,皮膚血流リズム発生のメカニズムに関する文献を整理し,メカニズムに基づく最適な計測部位の選定と,計測・解析法の構築を行う. 次に年齢,性別の異なる被験者を対象に,皮膚血流リズムの特徴(刺激に対する応答性の速さ,交感または副交感神経支配の優位性を明確にするために,基礎的な実験を行う.さらに従来指標(心拍変動,血圧など)との相関を検討し,ヒトの全身的な自律神経活動の状態を,定量的に評価するための手法を提案する. 【平成17年度の実績】 ・汎用の計測・信号処理ソフトウエア(LabView, MATLAB)にて,皮膚血流リズムの計測システムを構築 ・最適な血流計測位置を検討.指先は血流が多いが一過的な血流減少が問題.耳朶はセンサ取付が簡便であるが,体動に対してノイズがのりやすい.鼻は平面が少なく,血流センサの固定に難がある. よって現状では額部分が最適と考えられる ・関連する文献調査を行い,リズム発生のメカニズムを整理.また自律神経活動評価法の学会調査を実施 ・被験者10名を対象に,安静,リラックス,退屈誘導刺激を与えた場合の皮膚血流リズムの変化を計測. 実験結果と文献調査結果を整理し,日本生理人類学会誌に投稿(2006年1月).採択され,現在印刷中. ⇒実験の結果,皮膚血流リズムは,自律神経活動の影響を受け,特に交感神経活動が低く,副交感神経が優位な状態で増加する可能性が示された.18年度は,刺激に対する反応性だけでなく,自律神経活動のモデル化を含めて情報収集を行い,研究に反映させていく予定.
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