植物は重複受精をするため、花粉には受精までに2個の精細胞が形成される。しかし、成熟花粉では1個あるいは2個の精細胞を持つ種があり、殆どの植物は成熟花粉で2個の精細胞が形成されるが、雄原細胞が1個の場合は柱頭への受粉後に分裂し2個の精細胞が形成される。このような「核性」の違いは近縁種でも異なることがあり、花粉寿命に関係するともいわれるが、詳しいことは不明である。そこで、花粉の核性を決定する因子を突きとめることと核性差異の原因の解明を目的とし、核性に関する突然変異体のスクリーニングを行った。その結果、雄原細胞が2個で正常な3核性花粉と、雄原細胞が1個で2核性の花粉が1:1に分離する2核性突然変異体であるnikaku変異体を単離した。この変異は花粉からは子孫に遺伝せず、常に1:1の分離を示した。以上の結果からnikaku変異は花粉第2分裂(PM II)を特異的に阻害し、雌性配偶子には関係せず、花粉致死遺伝子であることが考えられた。また、nikaku変異はPM IIに特異的であり、生殖核のDNA量の結果からPM IIにおけるDNA複製を阻害すると考えられた。原因遺伝子を特定するためマップベースクローニングを行った結果、この変異体の遺伝座を約130kbに絞り込み、その中のMYBファミリー転写因子であるAt3g60460遺伝子に塩基置換を見出した。At3g60460遺伝子のノックアウトラインにおいても二核の表現型を示す事から、At3g60460遺伝子がnikaku変異体の原因遺伝子であると結論した。
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