本研究では、作物における花粉形成の分子機構を明らかにするため、分子遺伝学的手法により成熟花粉の形成に関わる遺伝子を単離して解析する。特に本研究では、花粉形成の中でも核分裂とDNAの代謝を制御するメカニズムに着目し、(1)なぜ成熟花粉には生殖核数に多様性があるかと、(2)オルガネラDNAが片親遺伝する制御機構、について分子機構を解明して育種へ応用するための基盤的研究を行った。(1)については昨年度までに花粉第2分裂に異常を示すシロイヌナズナ変異体nikakuを単離して原因遺伝子を同定した。この遺伝子は雄原細胞特異的に発現するmyb転写因子をコードすることが明らかとなった。この遺伝子プロモーターにより緑色蛍光タンパク質GFPを発現させると、精細胞特異的にGFPが局在することを確認した。 今年度は、上記の変異体の他に成熟花粉でオルガネラDNAが残存する変異体について解析を進めた。通常の野生型成熟花粉では栄養細胞にはオルガネラDNAがDAPIなどのDNA特異的蛍光色素では染色されないが、得られた変異体ではこれらが細かい顆粒状に観察される。1411では、花粉の変異に加えて、葉に若干の斑入りを生じるため、多面的な作用をすると予想された。今年度は、単離された変異体(#1411)についてさらに解析を進め、マップベースクローニングに必要なF2個体の育成と解析を行った。その結果、遺伝子領域を第2染色体の約700kb領域に特定することができた。上記の1411変異体の他にも同様の形質を示す変異体を得ており、これらの解析も同時に行った。
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