研究概要 |
植物は塩ストレスをはじめ、様々なストレス状態下では、過剰になったエネルギーによって活性酸素を生成し、これが細胞に障害を与えてしまう。過剰なエネルギー生成による活性酸素発生を抑えるシステムとして、植物はalternative oxidase(AOX)が関わったオルタナティブ呼吸系を有している。本研究では遺伝子導入によってイネAOX遺伝子を過剰発現させたイネ植物体を用い、この植物体がストレス条件下で耐性を持つのかを、オルタナティブ呼吸、チトクローム系呼吸の各速度を測定し、オルタナティブ呼吸増強が耐ストレス機構として有用であるかについて検討する。 今年度はイネAOX1a,AOX1b遺伝子を導入したイネ(ササニシキ)20系統について、AOX蛋白量をウェスタンハイブリダイゼーション法で、遺伝子発現量をPCRで確認し、クラス分けを行った。 またクラス分けを行ったイネ植物体を数段階の塩濃度下の水耕液によって育成し、次の結果を得た。 ・塩処理によってAOX1a, AOX1b遺伝子の発現量は増加したが、組換え体とWT(ササニシキ)の問には差が見られず、形質転換による遺伝子発現の増加効果は見られなかった。 ・総呼吸速度は塩処理によって著しく減少したが、総呼吸速度に占めるオルタナティブ呼吸の割合(A)は増加した。AはWTでは11.6%から18.5%増加した程度であったが、AOX1aを導入した系統は40%、AOX1bを導入した系統は50%近くまで上昇したことより、遺伝子導入によりオルタナティブ呼吸が増強されたものと考えられた。
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