我が国の水稲品種、耐乾性の強いとされる日本型陸稲品種およびしばしば旱魃の発生するベトナムのインデイカを中心とする在来イネ品種25品種を直径8cm高さ100cmの塩化ビニール管で栽培し、ガラス室内で開花期以降に潅水を停止した。葉面積および緑色を非破壊的に連続測定して、土壌乾燥による緑葉維持能力を比較した。土壌水分状態と葉面積と緑色スコアから評価した緑葉面積との間には直線的な関係があり、品種間でその傾きが異なった。陸稲品種や一部のベトナム在来品種では土壌乾燥によって緑棄面積が低下しにくく、一方で水稲品種や多くのベトナム在来品種で低下しやすかった。また、中間的な品種もあった。すなわち、土壌乾燥に対する緑葉維持能力(Stay green)には供試したイネに品種間差があると認められた。ただし、ベトナムの品種には感光性の高い品種が含まれるために、開花期が広い範囲に渡り、全ての品種が近似した温・湿度環境におかれなかった可能性があるのでさらに広い環境条件における追試が必要である。物質生産や収量についてもより詳しい解析が今後必要である。本結果を元に、これらの品種の中から幾つかの典型的な緑葉維持能力の異なる品種を選んで、さらに詳しい品種間差、そのメカニズムを明らかにする必要があるとみなされた。また、緑葉維持能力が生産に貢献しうるのかどうかについて物質生産や子実収量との関係から評価する必要がある。
|