初年度において日本の陸稲および水稲、しばしば旱魃に遭遇するベトナムの在来品種25品種を深さ1mのポットで栽培し、開花後土壌乾燥を与えたところ、土壌水分と緑葉維持能力との関係には品種間差が認められた。この結果を元に登熟期の土壌乾燥処理による緑葉維持能力が異なるとみなされた4品種を選んで、より栽培に近い条件での緑葉維持能力を比較した。これらの品種を容量約200リッターの土を詰めたポットを隣接して設置し、また周辺には寒冷紗を群落の高さで囲って、ガラス室において模擬群落条件で栽培した。開花後それまで十分に与えていた潅水を停止した。深さ別土壌水分をTDRにおいて、気孔伝導度をポロメターで数日毎に測定し、葉面積を開花期と目視による相対的な緑葉率との積から非破壊法で連続的に測定した。その結果、土壌水分の減少に伴い、緑葉面積の減少、気孔伝導度の低下が起こり、土壌水分との関係から品種間差が観察された。その結果登熟期間の乾物増加量と子実重に品種間差があった。ただし、土壌水分の消費速度が比較的強く影響を与えており、ポットで得られた品種間差に加えて利用可能土壌水分量の関与が示唆された。収量は不稔発生による影響が大きく、主に気象環境に影響される登熟初期の土壌乾燥程度が強く影響を与えているとみなされた。以上から、イネには土壌乾燥条件下での緑葉維持能力には連続的な品種間差があり、今後のこれらの品種を使った栽培条件下における有効性の検証および、QTL等を使った遺伝子の有効利用が期待された。
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