研究概要 |
本年度は,花の香気成分の同定と定量ならびに官能試験のためのサンプル提示法の検討を主として行った.研究を着実に進めるためには,再現性の高い方法を確立しておく必要がある.得られた知見は以下のとおりであった. 1.高精度な定性・定量法の開発:昨年度に確立したHS-SPME法では,香気成分の種類の同定はできるが,発散量の定量(絶対量の比較)は正確にはできなかった.そこで,ジエチル・エーテルを用いた溶媒抽出法を合わせて検討した.この方法では,揮発成分以外のものも抽出されるが,HS-SPME法と併用することで(それぞれの分析法の欠点が補えるので),香気成分の定性・定量を高精度に行えることが明らかになった. 2.ニオイゼラニウムの香気成分の多様性:植物の主要香気成分であるモノテルペン類,セスキテルペン類,フェニルプロパノイド,およびエステル類について,ニオイゼラニウムと他のハーブ類の含有香気成分の比較を行った.多くの植物では,上記4つのグループのうち生成する香気成分は限られていたが,ニオイゼラニウムは4つの生合成経路を持ち,品種によっては同時に複数のグループの香気を発生した.この特性により,他の植物種に比べて多様な(幅広いスペクトルの)香気を生成することが明らかになった. 3.サンプルの提示法の検討:鎮静効果のあるラベンダーと覚醒効果のあるミントを用いて,再現性のあるサンプル提示法を検討した.被験者にストレスを与えない方法として,シャーレに生葉を数枚入れ,鼻から10cm程度離して置く方法で香気効果の影響を確認できた.これを基に次年度さらにより良い方法を検討する.
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