昨年度の実験結果より、マンゴスチンのアポミクシスによって形成される種子は、カンキツにおいて認められるように、開花直後の胚のう内で珠心組織から分化した不定胚が発達して形成されたものではなく、その種子は細胞塊が発達したもので、成熟種子中には胚が存在しないことが明らかとなった。そこで本年度は、マンゴスチンの種子がどのような過程で形成されてくるのかを再確認する目的で、幼果期から成熟期に至るまで果実を経時的に採取し、その種子形成過程を調査した。その結果、マンゴスチン果実では開花後のかなり遅い時期に珠心組織から細胞塊が発生し、その細胞塊が徐々に肥大し、最終的にその細胞塊が子室を満たすようになり、それが種子となっていることを再確認した。また、その成熟種子中には環状に形成された前形成層が存在するのみで、幼芽や幼根の原器は分化していないことも確認した。さらに、幼芽や幼根は種子発芽時に、種子中の前形成層が外側への肥大成長を行うことで形成されていることを明らかにすることができた。 一方、マンゴスチンの種子が発芽時に細胞塊から幼芽や幼根の器官分化を促す要因を解明することを目的として、予備的に発芽時の種子中のオーキシン(IAA)、アプシジン酸(ABA)、ジャスモン酸、サリチル酸の含量を測定したところ、幼芽を分化する側に比べて、幼根を分化する側ではこれら全ての含量が高く、分化の極性との関係が示唆された。これらのホルモンは、将来種子となる細胞塊が幼果中で形成されるためにも何らかの役割を担っていると考えられるので、組織培養技術を用い、今後その点を検討していきたい。
|