マンゴスチン果実でみられる単為生殖(アポミクシス)による種子形成過程は昨年度の実験結果同様、開花後のかなり遅い時期に、胚珠内に形成される細胞塊が肥大発達することによっていることが確認できた。また、組織切片を作製し、顕微鏡による詳細な観察を実施した結果、この細胞塊は珠心組織ではなく、珠皮組織から形成されていることが明らかとなった。 さらに、この細胞塊を経時的に胚珠内から採取し、植物ホルモンを添加していない培地上で培養したところ、開花6週目以後に採取した細胞塊の直径が5mm以上に発達した細胞塊では、単一のシュートまたは根、あるいはその両方を形成し、種子としての能力を備えていることがわかった。特に、開花9〜10週目に摘出した細胞塊では、種子と同程度の大きさに発達しているものもあり、そのような細胞塊ではシュートの発生率が高かった。また、シュートが未発生あるいは伸長を停止し、突起組織より新たな肥大組織が増殖するものもみられた。 一方、摘出した細胞塊をサイトカイニンとオーキシンを含む培地上で培養した場合、細胞塊のサイズの小さなものからは単一のシュート、サイズの大きいものからは細胞塊全体から複数のシュートの発生がみられた。また、この細胞塊からシュートあるいは根が形成される過程を組織学的に観察したところ、成熟種子同様、この細胞塊中に存在する維管束様組織が重要な役割を果たしている可能性が明らかとなった。 以上のことより、マンゴスチンの単為生殖による種子は、珠皮組織に生成される細胞塊が発達して生じており、開花6〜7週後、直径5mmを超えた時点で種子としての能力を得ていることが示唆された。
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