研究概要 |
モモ樹の地上部に局所的に芽接ぎした低温要求性の異なる品種の芽からもたらされる生長制御シグナルの地下部への伝達と,そのフィードバックによって誘導される地上部の生長への影響について、前年度に引き続き調査を行った. 1.前年度に、少低温要求性品種‘福州'(低温要求量150CH)および多低温要求性品種‘八幡白鳳'(低温要求量900CH)を芽接ぎした多低温要求性品種‘八幡白鳳'および少低温要求性品種‘福州'の3年生樹を用いて、葉芽および花芽の発芽特性を継続して調査した.その結果、芽接ぎした少低温要求性品種の芽は多低温要求性品種に比べ早期に発芽したが、その影響は樹体本体の芽の発芽にほとんど影響を与えなかった.一方、芽接ぎした少低温要求性品種の芽の発芽は、少低温要求性品種上よりも多低温要求性品種上で明らかに遅延した.これらの反応は、花芽よりも葉芽で大きい傾向があった. 2.部分芽接ぎした挿し木個体を用いて、温度制御下で水耕した結果、少低温要求品種の根系は多低温要求性品に比べ早期に成長を開始したが、地上部と地下部の成長パターンに対して部分芽接ぎの影響は見られなかった. 以上の結果から、少低温要求性品種の部分的な芽接ぎによる樹全体の初期生長へのフィードバック効果は小さいことが示された.なお、多低温要求性品種の個体上の少低温要求性品種の葉芽に対しては、台木部分から成長遅延シグナルが伝達されている可能性が示唆された.
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