目的:Pollen-Tube Pathway(以下PTP)法は、授粉後の花柱を切断し、切断面にDNAを塗布して組換え種子を得る簡便な遺伝子組換え手法であるが、成功例は少なく、効率や遺伝性など十分な検証が試みられていない。本研究は、PTP法を園芸植物数種に適用し、組換え体獲得とその効率及び効率に関わる要因を解析することを目的とした。 材料および方法:材料には、自家受精で多産種子性の園芸種を分類体系が多岐にわたるよう数十種を選定した。本年は、パンジー、ペチュニア、テッポウユリ、アサガオ、サルビア、ウオールフラワー、および、これまでPTP法で報告例のあるイネを用いた。方法は、供試植物を開花させ、人工授粉後、花柱の長さに応じて数時間ごと(花粉管の伸長時間や花柱の長さは植物種によって異なり、最適処理時期を決定するために2hr〜48hrの間)に切断し、マーカー遺伝子を持つプラスミドpBI221(CaMV35SプロモーターーGUS(uidA遺伝子)をもつ)を切断面へ一定量(花柱切断面の径に応じて0.5ul〜2.0ul(50mg/ul DNA))塗布した。処理後、人工環境下で植物を育成させ、これらの種子を得た。種子発芽させ、実生株の子葉または株全体を用いてGUS assayを行った。また、受粉後から受精に要する時間検討、花粉管伸長の観察も併せて行った。 結果及び考察:授粉後の花柱切断する時間をかえて種子のできる割合を調べ受精に要する時間を検討した。種子形成率は、オクラ、アサガオ、ルコウソウでは、2時間後でも65〜100%と高い値を示し、パンジーでは時間経過とともの徐々に上昇し、また、ベチュニアでは24時間後から上昇した。PTP法によりパンジー8713個、オクラ3877個、ルコウソウ560個、アサガオ658個、ペチュニア2501個の種子を得た。このうち約16%の種子を用いGUSアッセイを行った結果、供試個体からはGUS positiveを観察することはできなかった。今後、上記植物では、今回明らかにされた受精時間前後でのDNA塗布をおこなうこと、その他の種についてもさらに実験を行う予定である。
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