平成17年度に、菌類で効率的に機能するプロモーター(TEFF)の下流におわんくらげ由来の緑色蛍光タンパク質(green fluorescence protein : gfp)遺伝子を組み込み作製した発現ベクターを用いて作出した、スイカつる割病菌(Fusarium oxysporum f.sp.niveum)およびイネ馬鹿苗病菌(F.moniliforme)の形質転換体を用いた。 1.スイカつる割病菌は根部から侵入し、維環束を経由して、茎から地上部へと進展するものの、さらに果柄経由でスイカ果実および種子へと移行する頻度は非常に低いことが、経時的な観察で明らかになった。一方、一旦茎の表面などに形成された分生子が、スイカ果実の傷から感染、果実内部および種子に移行し、種子伝染する頻度が高いことが判明した。 2.平成17年度にはスイカつる割病種子伝染の低環境負荷型防除法として、温酢酸浸漬法を提案した。本年の系統では、防除効果をさらにあげることはできなかった。温酢酸浸漬後のスイカ種子では、スイカつる割病菌は観察されず、死滅したものと思われた。 3.イネ馬鹿苗病菌の種子伝染の低環境負荷型防除法として、Trichoderma asperellumによる生物防除が提案されている。T.asperellumにも緑色蛍光タンパク質を導入、種子〜萌芽期、幼苗期における病原菌との相互作用を経時的に観察し、作用機作としてT.asperellumによるF.moniliformeの食菌が示唆された。この成果について論文としてとりまとめた。 平成17〜18年度の2年間で、土壌病害とされる病害の病原の種子伝染過程を緑色蛍光タンパク質を利用して可視化、その危険性を明らかにすると共に、環境負荷の少ない、温酢酸浸漬や生物防除などによる種子伝染の良好な防除手段を示唆した。
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