研究課題
本研究は、昆虫の食欲中枢を担う分子基盤を明らかにすることを究極の目標に据えている。その為に、研究材料には、共にヤガ科に属するアウヨトウ、ハスモンヨトウ幼虫を用いた。理由は、この2種の鱗翅目昆虫に寄生する各々の寄生バチ(アワヨトウに寄生するカリヤコマユバチ、ハスモンヨトウに寄生するCotesia manilae)が知られ、共に近縁種であるにも拘わらず、寄生後の両宿主幼虫成長速度に大きな違いが生じ、この主要因が寄生に伴う食欲の変化によるものであることが確認できたからである。寄生後ほとんど食欲を失う宿主ハスモンヨトウ幼虫、さらに、寄生されても食欲を維持し続ける宿主アワヨトウ幼虫である。今年度は、特に、前者の寄生後食欲を失うハスモンヨトウを主に実験材料に用い、寄生後どの程度の時間が経つと食欲が低下するかを先ず解析した。その結果、寄生後1日目には食欲を失い、2日目にはコントロールに比べて体重が顕著に低くなった。そこで、寄生後2日目の幼虫と同じ日齢の未寄生幼虫(コントロール幼虫)から脳を摘出し、そこからtotalRNAを抽出した。このtotalRNAからcDNAを合成し、それを鋳型にディッフェレンシャルディスプレイ法を用いて、両者の間で異なる発現量を示すmRNAを探索した。その結果、寄生後mRNA発現量が上昇する遺伝子が4種類、発現量が低下する遺伝子が1種類同定された。現在、一部の塩基配列決定を終えた段階であるが、さらに、全ての遺伝子の塩基配列の決定を急いでいる。
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