研究概要 |
社会性昆虫であるミツバチをコロニーという社会的環境から隔離して単独で飼育すると,学習能力が著しく低下する.そこで本研究課題では,単独飼育個体と対照区の個体間で脳における遺伝子発現パターンを比較し,社会的刺激依存的に発現量が変化し,記憶や学習などの脳の高次機能に関与する遺伝子を検索・同定することを計画した. 1,平成17年度にミツバチの高次中枢である脳キノコ体に特異的に発現し,記憶・学習に関与している可能性のある3つの遺伝子,CamKII,IP_3RおよびPKCについて,その発現量をReverse Transcription-Polymerase Chain Reaction (RT-PCR)法で定量した.その結果,これらの遺伝子の発現量はミツバチの加齢に伴い増加することが確認された.この発現量の増加は老齢のミツバチのほうが弱齢個体より学習能力が高いことと一致している.しかし,同日齢の単独飼育個体と対照区の個体での差は検出されなかった. 2,トランスジェニック・ミツバチを作出することを目的とし,ミツバチの初期発生における生殖細胞の動態を明らかにするため,生殖細胞のマーカー遺伝子であるVASAのミツバチホモローグを同定した.また,昆虫のトランスポゾンであるPiggyBacを応用したミツバチへの遺伝子導入法を開発するために必要なプロモーターの検索を行った.ミツバチから単離したEF1プロモーターと他の昆虫で利用されている幾つかのプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を挿入したプラスミドを,ミツバチ初期胚に顕微注射することでレポーターアッセイを行ったところ,EF1プロモーターとウイルス由来のCMVが利用できることが明らかになった.
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