研究概要 |
絶対寄生性の土壌病害菌であるアブラナ科根こぶ病菌の感染機構と有機物連用による発病抑制メカニズムを明らかにする目的で、土壌中での休眠胞子の発芽検定法の確立とレース分化の分子解析を行っている。 1.核染色による発芽検定法の確立 これまで核(DNA)染色によく用いられてきたDAPIは、根こぶ病菌の休眠胞子細胞壁を(生死にかかわらず)染色するFluorescent Brightner 28(FB28)と蛍光波長域が重なるため、この2つの色素を同時に使って、根圏土壌から回収した全胞子数と核を喪失した(発芽した)胞子の数を測定することはできない。そこで、FB28とは蛍光波長域を異にする核染色色素であるSYT082 Orange Fluorescent Nucleic Acid Stainsを用いて、核及び細胞壁の二重染色を行い、根こぶ病菌胞子の全数と発芽率,(核喪失胞子の割合)を同時に測定できる実験系を確立した。本方法により(1)根圏での休眠胞子の核喪失(発芽)率と寄主への根毛感染数との間には有意な相関があること、(2)土壌酸性を中和すると、寄主根圏における胞子の発芽率が有意に低下し、それに続く根毛感染が減少すること、(3)非寄主の根圏においても休眠胞子は発芽する場合があることなどを明らかにした。 2.分子生態解析および発芽誘因物質の同定 従来、検定植物への接種試験により行われていた根こぶ病菌のレース識別を分子マーカーを用いて簡便に行う方法を確立するために、名古屋大学研究圃場より分離されたNGY03株のリボソームRNA遺伝子(rDNA) IGS領域の塩基配列を決定した。さらに他の菌株のIGS領域をPCR増幅するための万能プライマーを設計するために、NGY03のrDNA転写ユニット9.5kbpの全配列を決定し、この株のIGS領域を特異的に増幅するプライマーの組み合わせを選抜することに成功した。
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