研究課題
リン酸は窒素に次いで欠乏しやすい要素である。土壌中のリン酸の大部分は結合型で、植物が直接吸収できる可溶型リン酸の土壌溶液中の濃度はおよそ1μM程度、植物体内との濃度差は2千倍以上になる。ルーピンやヤマモガシ科の植物はクラスター根と呼ばれる特殊な根を作る。この根は1cm程度の短い側根を大量に密集させて発生することで表面積が通常の根の100倍以上になる。加えて酸性フォスファターゼや有機酸の分泌量が上昇しており、結合型のリン酸を溶かして吸収する能力が強い。クラスター根の形成はリン酸欠乏やオーキシンで促進されることが分かっているが、クラスター根を誘導する遺伝子やシグナル伝達系については分かっていない。白花ルーピンのクラスター根形成に関与する遺伝子を明らかにするために、クラスター根誘導のかかった根からcDNA libraryをすでに作成した。本研究ではこのlibraryからRNAi法(遺伝子ノックアウト法の一つ)で目的の遺伝子をスクリーニングして、その機能を解析する。17年度はRNAi法の開発に取り組んだ。作物でクラスター根を作るのは白花ルーピンだけであるが、白花ルーピンは形質転換できない。そこでウイルスベクターを用いたRNAi法に着目し(この方法は形質転換を必要としない)、検討を行なった。RNAiを誘導するのに実績があるcucumber mosaic virus (CMV)はルーピンに感染せず使用できないことが分かった。そこでpeanut stunt virus (PSV)を試したところ全身感染することが分かった。次にクローニングしたPSVのゲノムにタバコの遺伝子断片を組み込みタバコに接種したところ、RNAiが起こることを確認した。この結果はPSVがRNAiを誘導するベクターとして使用できることを示している。今後ルーピンにRNAiを起こすことを確認し、libraryのスクリーニングに着手する。
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Plant and Animal Genome XIV Conference (in press)
3rd International Conference on Legume Genomics and Genetics (in press)
Proceedings of the 15th Plant Nutrition Colloquium
ページ: 94-96