本研究は、申請者らが細菌エンドファイトの機能的なコミュニティーとして発見した「嫌気窒素固定コンソーシアム」を対象として、その植物や作物への広がり、植物体内における機能の解明を行うものである。本年度の成果は以下の通りである。多数の野生植物や作物由来のClostridium属細菌の系統解析を行った。その結果、Clostridium属細菌が新たに4科8植物種:イネ科植物のトウモロコシ(Zea mays)、バミューダグラス(Cynodon dactylon)および'トールフェスク(Festuca arundinacea)、ナス科植物のタバコ(Nicotiana tabacum)、マメ科植物のダイズ(Glycine max)、およびマングローブ植物であるヒルギ科のメヒルギ(Kandelia candel)、オヒルギ(Bruguiera gymnorrhiza)およびクマツヅラ科のヒルギダマシ(Avicennia marina)にClostridiUm属細菌が生息していることが明らかとなった。 近年、cluster XIVaに属するClostridium属細菌が、特に非培養法により様々な環境(人糞、動物の消化管、シロアリの腸管など)から検出されている。そこで、植物由来のclusterXrVaに属するClostridium属細菌と、その他の分離源由来のcluster XIVaに属するClostridium属細菌の系統解析を行った。その結果、植物由来のClostridium属分離株は、系統学的に2ヶ所(group IおよびII)に集中し、高いbootstrap値で他の分離源(ルーメン・腸内、糞便、シロアリ)のClostridium属分菌株と区別された。したがって、植物由来のcluster XIVaに属するClostridium属細菌は、植物体内環箋に適応して進化した可能性が考えられた。
|