研究課題
本年度は以下のような成果を得た。1.単離したイネアルミニウム感受性突然変異体als1を用いて、Morin染色などにより細胞内アルミニウムの濃度や局在性を調べた結果、野生型イネと比べ、変異体イネの根の皮層細胞内に高濃度のアルミニウムが観察された。50μMのアルミニウムで3時間処理して、野生型と変異体の根の先端(0-1cm)のアポプラスト液を採集し、アルミニウムの濃度を測定した結果、外液のアルミニウム濃度より高い濃度が検出されたが、野生型と変異型との間に顕著な差は認められなかった。2.単離したアルミニウム耐性遺伝子Als1の機能解析を行った。定量的RT-PCRでAls1の発現パターンを調べた結果、Als1遺伝子の発現はわずか2時間のアルミニウム処理によって誘導された。またアルミニウム処理濃度の増加に伴って、Als1遺伝子の発現量も増加したが、30μMで飽和になった。Als1遺伝子は根の先端だけではなく、基部にも発現していた。Als1の抗体を作成し、Als1の組織局在性を調べた結果、Als1は根の先端においてすべての細胞に、基部側において表皮細胞以外のすべての細胞に局在していた。またAls1プロモーターの制御下にAls1とGFPの融合遺伝子をイネに形質転換し、Als1の局在性を観察したところ、抗体染色と同じ結果を得た。しかも、Als1は細胞膜に局在していることを明らかにした。Als1はATP結合ドメンだけを有するABCトランスポーター様タンパク質をコードしていることから、Als1はアルミニウムの細胞内への進入もしくは細胞内に入ったアルミニウムを外へ排出することに関与している可能性がある。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Plant Soil 287
ページ: 375-383
Ann.Bot. 98
ページ: 389-395