本研究では、我が国の醸造及び酵素生産に永く活用されている麹菌において、その遺伝子機能の効率的な抑制技術を開発し、機能不明遺伝子の機能・役割を明らかにする基盤技術を開発することを目的とする。本年度行った研究内容と研究成果を以下に記す。 (1)RNA干渉確認用レポーター遺伝子の麹菌への導入 RNA干渉による遺伝子機能抑制が生じているかを簡便に観察するため、黒麹菌Aspergillus awamoriにコロニー色の有無で判別を可能とするレポーター遺伝子としてβ-グルクロニダーゼ遺伝子を導入し、MG301株を構築した。本菌株は4-メチルウンベリフェリル-β-グルクロニド存在下で青色のコロニーを形成したため、RNA干渉によるβ-グルクロニダーゼ遺伝子機能の抑制により、RNA干渉効果を簡便に測定することができるものと考察した。 (2)二本鎖RNAを発現する糸状菌ベクターの設計・開発 標的RNAと相同な二本鎖RNAを発現させるためのヘアピンRNA発現用染色体組込み型ベクターを構築中である。 (3)非相同組換え欠損株(KU80株)の構築と遺伝子破壊 ヒトのKu80タンパク質はKu70タンパク質とヘテロダイマーを形成し、非相同配列末端同士の結合、すなわち非相同組換えに関与する。Aspergillus nidulansのKu80オーソログ遺伝子AnkuBを薬剤耐性aurA遺伝子で置換し、AnkuBを破壊したKU80株を構築した。KU80株では生育阻害等の特徴は認められず、野生株と同様の表現型を示した。KU80株を宿主とした相同組換えにより、機能解析の進んでいないpmtB、pmtC遺伝子の破壊株を極めて高効率に短期間に取得することができた。
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