超臨界二酸化炭素は、臨界温度31.0℃、臨界圧力7.38MPaと比較的超臨界状態を実現しやすく、また、それ自体が安全・無害・不燃性の天然溶媒であるため、有機溶媒に代わる安全な抽出溶媒として、すでに食品分野などにおいても実用化の例を見ることができる。超臨界二酸化炭素を有機溶媒に代わる酵素反応溶媒として用いることを試みた。リパーゼ触媒によるステアリン酸のエタノールによるエステル化反応、およびその逆反応であるステアリン酸エチルの加水分解反応を超臨界二酸化炭素、ベンゼン、ヘキサンを溶媒として行ったところ、いずれの場合においても、超臨界二酸化炭素中において最も反応速度が大きいことがわかった。 一方、イオン液体は、蒸気圧が殆どゼロ、難燃性、イオン性であるが低粘度、水とも有機溶媒とも混じりにくいという特徴があり、有機溶媒に代わるグリーン溶媒としての期待が高い。イオン液体のうち、1-butyl-3-methyl-imidazolium tetrafluoroborate([bmim][[BF_4])は水と任意の割合で混合可能である。そこで、[bmim][BF_4]の酵素タンパクに対する共存効果を調べるために、RNAseをモデルとして、その熱安定性に対する[bmim][BF_4]の共存の影響を高感度示差走査熱量計による熱分析により測定した。その結果、期待に反して、[bmim][BF_4]は水溶液中ではRNAseを安定化せず、むしろ不安定化する傾向があることがわかった。しかしながら、イオン液体は多くの種類があり、酵素安定性や活性にポジティブな効果を示すものも存在することが期待され、今後さらなるスクリ-ニングを試みる。 さらに、イオン液体を反応溶媒とし、超臨界二酸化炭素を抽出溶媒とするグリーンバイオリアクターについて、そのための反応システムを試作した。
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