研究課題
抗真菌性抗生物質アンホテリシンB(AmB)および、その殺菌作用を増幅するニンニク薬効成分アリシンについて、これらの協調的殺菌作用のメカニズムを出芽酵母S.cerevisiaeを被験菌とする系で検討した。まず、アリシンはAmBの殺菌作用を著しく増幅するが、それが細胞内カリウムイオンの漏出を伴うAmB自身の細胞膜障害作用の促進によるものではないことを明らかにした。一方、AmBは高濃度で液胞膜の融合を阻害し、細胞の浸透圧適応を阻害する事実に加えて、アリシンがAmBの液胞膜への作用を本来の致死濃度以下で現れるよう介助している事実をも見出すにいたった。これらの結果は、動物細胞には無い液胞を本研究によって開発しようとする介助型抗菌作用における介助分子の標的として位置づけうる可能性を示唆するものであった。アリシンは、病原性酵母あるいは糸状菌であるCandida albicansならびにAspergillus fumigatusに対するAmBの殺菌作用をも著しく増幅することができた。一方、アリシンはヒト白血病細胞HL-60に対して独自の抗ガン活性を発揮したが、同株に対するAmBの細胞毒性を増幅することはなかった。すなわち、アリシンとAmBとの介助型抗菌作用がヒトへの副作用の増幅とはならない事実と受けとめることができる。アリシンは近年抗菌活性が注目されている銅(Cu^<2+>)の抗真菌活性に対しても増幅作用を示した。銅は致死濃度でS.cerevisiaeの細胞内に活性酸素種(ROS)の産生を促進し、その酸化ストレスに起因する細胞膜障害作用によって殺菌的作用をおよぼす。一方、アリシンは細胞内にROSの産生を誘導しえない濃度で銅の殺菌作用を介助した。銅は細胞質内に取り込まれることはなく、タンパク質成分との結合を介して細胞膜リン脂質内に局在する事実も見いだされている。
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