研究概要 |
単子葉植物の茎葉は、農産系バイオマスとしての有用性が高いにもかかわらず、細胞壁の生合成機構は殆ど解明されていなかった。このような中で、最近、初めてイネの二次壁セルロース生合成に係る酵素遺伝子が同定され、機能が証明された。植物二次壁のセルロースは合成酵素複合体の協調的作用により生合成され、各々の鎖が束になることで強固な高次構造が形成される。そこで、本研究では、本酵素によるセルロース生合成系の制御を行うことを目的とした。 本年度は、イネ二次細胞壁セルロース合成酵素遺伝子中へ変異が導入された配列をもつベクターの構築を行った。具体的には、三種類のセルロース合成酵素(OsCesA4,OsCesA7及びOsCesA9)をコードする遺伝子(OsCesA4:3.0 kbp,OsCesA7:3.2 kbp,OsCesA9:3.2 kbp)について、アミノ酸配列における保存領域(…SCYVSDDGASML…)の中で酵素活性の維持に不可欠なアスパラギン酸残基(下線部分(D))をアラニン残基(A)に改変し、これらの変異酵素をコードする遺伝子をそれぞれ高発現ベクターに導入した。変異型セルロース合成酵素遺伝子を発現させないコントロールとしては、ベクターのみを用いることとした。また、イネ細胞壁の酵素分解性を評価するため、セルラーゼ含有酵素製剤(Celluclast, Novozymes社製)を用いて生成グルコース量による簡易評価法を検討し条件を絞り込んだ。本酵素製剤中に存在するβ-グルコシダーゼによるセロオリゴ糖からグルコースへの変換が律速段階となる状況について評価した。また、ヘミセルロースやリグニンを除去し、セルロースを露出させるためのイネ細胞壁の前処理方法としては、亜塩素酸処理と水酸化カリウム処理の併用が効果的であった。
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