研究概要 |
ヤマノイモのむかごでは、ジベレリン(GA)がアブシジン酸(ABA)の内生レベルを高めることによって休眠を誘導・維持すると考えられている(GA-誘導休眠)。ヤマノイモには、ABAから8'-ヒドロキシABA(8'-OHABA)を介して生理活性のないデヒドロファゼイン酸に至る一般的なABA異化経路とABA様活性のある7'-ヒドロキシABA(7'-OHABA)に至る代謝経路がある。 今年度では、昨年度の研究で明らかになったABA8'位水酸化酵素遺伝子DjABA8'ox1,DjABA8'ox2の全長ORFに酵母の発現ベクター(pYeDP60)に組み込むための制限酵素サイトを付加した。現在、これらの遺伝子を発現ベクターに組み込んで、形質転換した酵母(WAT11株)のリコンビナントタンパク質の機能解析の実験を進めているが、未だ結果を得るに至っていない。 さらにDjABA8'oxの3番目のホモログであるDjABA8'ox3を、RACE法により、ORFの3'末端より上流1249bp(C末より上流363aa)まで決定した。 つぎに、ヤマノイモの休眠むかごをGA、ABA、GA生合成阻害剤とABA生合成阻害剤で培養し、それぞれのむかごでのDjABA8'ox1とDjABA8'ox2の発現量を半定量的RT-PCRによって比較した。その結果、DjABA8'ox1の発現はそれぞれのむかごで余り変化がないが、DjABA8'ox2は発芽が促進されるGA生合成阻害剤とABA生合成阻害剤で培養したむかごで、発現量が高かった。この結果はむかごのABAの内生レベルを低下させることになり、GAがABAを介してむかごの発芽を抑制するという仮説に矛盾しない。このような例は他に殆ど報告がないので、さらに詳細な検討が必要である。 また、DjABA8'oxのホモログのうち、ABAの7'位を水酸化して7'-OHABAへ代謝する酵素遺伝子ホモログ(DjABA7'ox)の探索が今後の重要な課題である。
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