研究課題
CGTaseはデキストリンから水酸基への糖転移を触媒するが、これまでの実施例から、その水酸基結合する化合物が比較的水溶性が高い事が重要である。しかし、基質の疎水性程度とCGTaseの触媒作用に関しては明らかにされていなかった。複雑な混合物をなす各種天然物質物質群を効率よく分離するための一つの方法として、そのような混合物をCGTaseで前処理する事により分離を容易にする事が本研究課題の当初の目的であった。その予備実験として、ラウリン酸がスクロースの2、6または6'位に結合するスクロースの脂肪酸エステルを用い、デキストリンの存在下、CGTaseを作用させた。その結果、6位にラウリン酸が結合するスクロース脂肪酸エステルのみにグルコース残基が1-3個転移した生成物が得られた。しかし、その収率は20%と低い。TLC分析から判断する限り、その原因は糖転移が不十分というよりも、3個あるいはそれ以上の多くのグルコース残基がスクロース脂肪酸エステルに付加したものが生成しているためと考えられた。この現象はCGTase触媒による反応の一般的特徴である。また、スクロースの2位や6'位にラウリン酸が結合する場合は、糖転移が殆ど起こらなかった。これらの結果から、CGTaseによる疎水性基結合基質への糖転移反応は、付加するグルコース残基の数が一定にならない事および基質に結合する疎水性残基の位置によって触媒効率が大きく異なる事が判明した。これらの事実は本研究課題の当初の目的遂行には大きな問題となる。このように当初の目的そのものは達成されなかったが、非イオン性界面活性剤として重要なものであり広く使われているスクロース脂肪酸エステルの親水性部分に糖を付加しえる事が判り、蔗糖誘導体の界面活性剤の物理化学的性質を変化させる一つの方法になり得る事が期待される。この結果については論文発表を行った。
すべて 2007
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Bioscicence, Biotechnology and Biochemistry 71巻(確約有り)(印刷中)