研究概要 |
「菌根」とは菌類と植物根との共生形態であり、菌根を形成する菌類を菌根菌と呼ぶ。本課題で取り上げるアーバスキュラー菌根菌(AMF)は80%以上の陸上植物と共生する自然生態系で最も広く見られる菌根菌であり、植物と相利共生の関係にある。菌根形成における相互認識シグナルのうちで植物の分泌するシグナル物質を最近我々は単離・構造決定することに成功し、活性物質がストリゴラクトンであることを明らかにした。 一方、菌根菌が分泌し、植物が認識するシグナル物質はMyc factorと呼ばれ、その化学的同定が熱望されている。AMFが感染する極初期に植物根において発現が誘導される遺伝子群の中で、シグナル伝達に関わることが示唆されているカルシウム結合タンパク質ホモログ遺伝子に着目し、その遺伝子プロモーターの活性を指標にしたMyc factorアッセイ系の開発に我々は成功した。すなわち、LjCbp1遺伝子のプロモーター領域にGUS遺伝子が挿入されたミヤコグサT90形質転換体をチューブ管の中で,2〜3週間生育させた後、根の近傍に試料を含むペーパーディスクを置いて,GUS染色を行った。この結果,菌根菌に一つであるGigaspora margaritaの胞子メタノール抽出物にGUS反応を示す物質の存在が示唆された。このメタノール抽出物を溶媒分画およびHPLCで分取したところ、幾つかの画分に活性が認められ、Myc factorには数種類の物質が存在するものと考えられた。
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