研究概要 |
「菌根」とは菌類と植物根との共生形態であり、菌根を形成する菌類を菌根菌と呼ぶ。本課題で取り上げるアーバスキュラー菌根菌(AMF)は80%以上の陸上植物と共生する自然生態系で最も広く見られる菌根菌であり、植物と相利共生の関係にある。菌根形成における相互認識シグナルのうちで植物の分泌するシグナル物質を最近我々は単離・構造決定することに成功し、活性物質がストリゴラクトンであることを明らかにした。 一方、菌根菌が分泌し、植物が認識するシグナル物質はMyc factorと呼ばれ、その化学的同定が熱望されている。我々が開発に成功したMyc factorアッセイ系を用いて、菌根菌の一つであるGlomus intraradicesの胞子メタノール抽出物から活性物質の精製を進めた。すなわち、このメタノール抽出物を溶媒分画およびHPLCで分取したところ、幾っかの画分に活性が認められた。これらの中で最も収量の多い化合物について構造解析を行い、本化合物がcis-11-hexadecanoic acidであることを推定した。そこでcis-11-hexadecanalを出発物質とする合成により本化合物を調製し、活性試験に供したところ、活性が認められた。次に本化合物をアシル部分とするボスファチジルコリンの合成を行い、1,2-di(cis-11-hexadecanoy1)-sn-glycero-3-phosphocholineを得た。本化合物も活性試を示しとことから、胞子中で存在するか否かの検討を今後行う予定である。
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