研究課題
近年、苦味、甘味、うま味等の味覚レセプターが同定され、味覚に関する諸問題を分子レベルで検討することが可能になってきた。苦味の感受性は個人によって異なっており、例えばアブラナ科植物の苦味を拒否する集団が存在する。疫学的調査ではブロッコリーやカリフラワーなどのアブラナ科植物の摂取量が少ない集団での発ガン率が高い結果がでている。これは、レセプターの感受性の個体差と関連している可能性がある。本研究は、被験者の舌の表皮組織及び唾液を非侵襲的に採取して試料として、その味覚レセプターと唾液中味覚修飾因子を個人・個体ごとに解析して、苦味感受性の個人差を分子レベルで明らかにするために企図した。併せて、関連性のある味とされる渋味感受性についても、被験者とラットを用いてその個人差・個体差の生ずる理由を科学的に明らかにすることとした。最初に、「唾液中の苦味または渋味修飾因子の同定」を行った。唾液中の渋味修飾因子の探索については、各個人の唾液を試料として、これまで指摘されてきているpH、proline rich protein(PRP)量の個人差についてまとめるべく検討を行った。渋味は、まだその受容機構が知られていないので、事前にラットを用いた電気生理的検討を行った。その結果、渋味が物理感覚(三叉神経介在性)ではなく、味神経によって伝えられることを、代表的なタンニン酸等のほかに渋味を感ずる酸性化大豆タンパク質を用いて味神経(鼓索神経、舌咽神経)を用いて証明した。併せて神経線維解析(fiber profile patternの解析)を行って、このことを確認した。また、唾液中の分泌タンパク質のmRNA発現とタンパク質発現の定量を行うので、マイクロプレート吸光度リーダーを購入し、その後の解析に頻繁に使用している。現在、ヒト舌表皮組織からの苦味レセプター標本のサンプリング法を確立しつつあるところである。
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in Association for Chemoreception Sciences XXVIIth Annual Meeting, Abstract=p.83,Sarasota, Florida, USA, Apr. 13-17,2005
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日本農芸化学会大会講演要旨集(札幌、2005年度)
ページ: 298