研究課題
腸管上皮細胞としてヒト由来Caco-2を、免疫系細胞としてヒト由来のRaji B細胞、単球系THP-1細胞を用い、透過性膜上の腸管細胞と免疫細胞を共培養することによって蛍光ラテックスビーズの細胞層透過性が上昇するか検討した。Caco-2の基底膜側にRaji細胞を加えて共培養する系で、Caco-2細胞層の一部に蛍光ビーズの透過性が上昇するものが見出された。そこで、より安定な成績が得られることを期待して、共培養ではなく、免疫系細胞の培養上清を用いた実験系を再構築した。Caco-2細胞層の基底膜側チャンバーにRaji B細胞の培養上清を希釈して加えて4日間培養した。その後、蛍光ビーズを用いてCaco-2細胞層の高分子透過性亢進の有無を観察したところ、一部のウェルでビーズの透過性が数倍〜10倍程度上昇した。またそのようなウェルでは、M細胞のマーカーとして知られるSialyl-Lewis A抗原を発現している細胞の存在が認められたが、その割合はきわめて低いものであった。次いで、蛍光ビーズ透過性亢進が見られた細胞層からmRNAを回収し、DNAマイクロアレイ(約47,000遺伝子)を用いて遺伝子発現の変化を観察した。変動の見られた遺伝子約300を解析したところ、発現上昇を示したものには転写翻訳に関わる遺伝子が、また発現抑制が見られたものにはMg結合タンパク質など金属とかかわりのあるタンバク質の遺伝子が多く認められたほか、細胞内シグナル伝達に関わるある種のタンパク質の関与も示唆された。しかし、M細胞様に分化するのは培養細胞のうちのほんの一部であり、M細胞の機能解析を行う実験用細胞株としては、さらなる工夫が必要と考えられた。我々の研究室ではマウス上皮細胞が培養可能になったことから、マウスの上皮細胞とパイエル板細胞の共培養系によりM細胞様機能を持つ細胞取得を試みる予定である。
すべて 2006
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Exp. Cell Res. 312(19)
ページ: 3909-3919