研究課題
高齢社会を迎えた日本では、今後ますます生活習慣病患者数が増えることが予想されている。生活習慣病の多くは加齢とともに起こる肥満に起因しており、肥満を予防することは生活習慣病軽減に有効である。肥満は脂肪細胞内に脂肪滴として過剰の中性脂肪を蓄積し、細胞が肥大化することであり、この解消には脂肪滴形成、すなわち中性脂肪の蓄積を抑制することが考えられる。本研究では、細胞内脂肪滴に必須な脂肪滴表面タンパク質ペリリピンを過剰発現させた培養細胞を用い、脂肪酸リッチ培地で培養した際に容易にできる脂肪滴の形成を阻害する食品成分を探索する評価系を構築し、これを用いたアッセイを試み有効成分を見出すことを目的とする。本年度は、どのような機構でペリリピン過剰発現が脂肪滴形成亢進に結びつくかについて解析を行った。前駆脂肪細胞を分化させ、脂肪細胞から脂肪滴を調製した。ここに含まれるタンパク質を質量分析法により同定を行った。脂肪滴は小胞体で合成されたトリグリセリドを含む小胞体膜断片が起源となっていることが想定されているが,脂肪滴には数種類の小胞体膜タンパク質が検出された。ミトコンドリアの混入と思われるタンパク質の他に,細胞質に局在すると考えられていたタンパク質を見出した。本タンパク質の脂肪滴形成に及ぼす影響を解析したところ、ペリリピンとともにトリグリセリド蓄積を促進させる効果が確認された。従って,本タンパク質とペリリピン脂肪滴形成に対しての相乗効果を断ち切るような活性を有した食品成分には抗肥満活性を期待できることが示唆された。今後はその活性を評価する評価系の構築を試みる。
すべて 2005
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