研究概要 |
心材腐朽を有する樹幹断面の暴風による幹折れ挙動を定量的に評価する方法を検討し,緑化木管理に資することを目的として研究に着手した。平成17年度の研究実績は以下の通りである。 1.樹種別の被害形態の考察 台風0418による北海道大学構内の緑化木の被害調査を行った。被害の多かった樹種はニセアカシア,ポプラ,ヤマナラシ,シンジュ,ハルニレなどである。被害形態は被害木448本のうち,幹(大枝)折れが56%,根返りが42%,幹や枝の二股部からの割裂が3%であった。ポプラやハルニレの大径老木では例外なく心材腐朽のために樹幹下部が薄肉化しており,曲げ破壊というよりはシェル座屈のような破壊形態であった。根返りはニセアカシアで多かったが,北大構内の土壌条件が均一ではないので,樹種特性かどうかは不明。二股部からの割裂はカエデ属とナナカマドに限られており,樹形の樹種特性によるものと思われる。樹幹直径の割に樹高の低い樹種(イチョウやスズカケノキ)は被害が少なかった。 2.被害木の腐朽菌類相の解明 北海道大学構内での幹折れ被害木の腐朽率は33%であった。このうち胸高直径が110cm以上の高齢の樹木の腐朽率は86%と高かった。樹種別では高齢のハルニレとニセアカシアの腐朽率が高かった。腐朽菌の種については木片からDNAを抽出し,プライマーITS1fまたはITS1とITS4Bを用いてPCR増幅し、電気泳動でバンドが確認されたものについてシーケンスを行いBLAST検索により腐朽菌の種の推定を行った結果,ハルニレから9種,ヤマナラシから6種,ニセアカシアから3種,シンジュから1種の腐朽菌が確認された。菌類相は樹種間で異なり,腐朽による幹折れが多かったハルニレでの優先種はPolyporus squamosusであった。
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