研究概要 |
新潟県の海岸クロマツ人工林と山梨県のカラマツ人工林において,それぞれ,野ネズミの個体群動態がドングリの貯食型散布に与える影響,および捕食者の有無が野ネズミ個体群動態に与える影響を調査した。フクロウは野ネズミの重大な捕食者であり,フクロウの生息の有無,活動量は野ネズミの個体群動態をコントロールしていると考えた。 海岸クロマツ人工林での磁石埋め込み法による堅果追跡と生け捕りワナを用いた記号放逐法による調査結果から,ドングリの消失速度はアカネズミの活動量が活発になるほど早くなる傾向が認められた。しかし、結局すべてのドングリが消失するため、どのように運搬・貯蔵されたかが重要となる。分散貯蔵と集中貯蔵の貯蔵様式の違いで比較すると、分散貯蔵ではドングリが遠くまで散布され、埋土される深さが浅い傾向があった。一方、集中貯蔵では近くに散布され、埋土される深さが深く、ドングリの発芽には不利であった。集中貯蔵が多く見られる場所と定住性個体が出現した場所は一致しており、定住性個体が集中貯蔵を行ったと考えられた。ドングリの散布距離とドングリの落下場所におけるアカネズミの活動量の関係は確認できなかった。しかし、ドングリの埋土深はアカネズミの活動量と関係が認められ、ドングリの落下場所におけるアカネズミの活動が活発であった場合、深い場所に集中貯蔵されることが明らかになった。以上のことから、アカネズミの定住性個体の活動が活発な場所に落下したドングリは、近くの深い場所に集中貯蔵され、森林の更新に貢献していないと考えた。 山梨県のカラマツ人工林での自動撮影装置を用いた野ネズミ捕食者の生息数と野ネズミ個体群動態との関係をみた調査では,野ネズミ捕食者(ここではテンなどの中型哺乳類)の生息数と野ネズミの個体群密度に一定の関係はみられなかった。
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