「シリブカガシの塊根が幼木段階における撹乱や乾燥に対する適応能力に貢献している」という仮説をたて、このことを栽培実験により検証した。塊根をつけたシリブカガシと塊根を持たない同属のマテバシイの3年生幼樹を実験材料とし、それらに無処理・摘葉・断幹という3種の撹乱処理をした後、光条件(明と暗)と土壌条件(土と砂)が異なる環境下で7ヶ月間栽培し、その間の成長量・再生量と塊根量の変化の関係から塊根の機能を考察した。観測総数は288個体である(2種×2土壌条件×2光条件×3処理×12繰返し個体)。両種の潜在的な成長力を、ストレスが少ない明+土条件下での撹乱処理をしなかった個体の成長量で評価すると、マテバシイの方が高かった。しかし、摘葉・断幹処理後の再生力では、明条件ではシリブカガシ、暗条件ではマテバシイの方が土壌条件の違いに関わらず高かくなった。すなわち、撹乱が無く光・水分の豊富な環境下ではマテバシイの方が高い成長力を持つが、撹乱された後の再生力では、明条件であればシリブカガシの方が高く、とくに乾燥した土壌条件下(砂)において2種間の再生力に大きな差が現れた。マテバシイと比較して高い再生力を示した明+土条件下での実験終了時での塊根体積は、開始時の60%まで減少していたが、同じ条件であっても撹乱処理をしなかった個体の塊根体積は増大していた。この結果から、撹乱後のシリブカガシの再生には塊根が大きく貢献していると判断できた。
|