研究概要 |
モウソウチクの成葉から全DNAを抽出し,既知のイネのATP合成酵素βサブユニット遺伝子(以下atpbと略)の配列を基に作成したプライマーを用いてPCRをおこなった。得られたPCR産物をサブクローニングし,塩基配列を決定し配列を比較した。比較した領域3カ所についてそれぞれで配列の異なる3クローン(B-1,B-2,B-3)が得られた。いずれの領域においても2クローンは90%前後の非常に高い相同性を示したが,残りの1クローンは他の2クローンとは56〜85%と相同性が低かった。これらのクローンの各組織における発現を解析するために,成葉,幼竹の節間上下部およびタケノコからmRNAを抽出し,cDNAを合成してRT-PCRをおこなった。使用したプライマーは各クローンにすべて共通となる配列をもつプライマーおよび各クローンに特異的な配列をもつプライマーである。各クローンに共通のプライマーを用いると幼竹の節間下部で発現量がもっとも多く,節間上部では少なかった。このことからも,成長に伴う細胞活動にエネルギーを供給するためにAT合成酵素がフル稼働している様子がうかがえる。各クローンに特異的なプライマーを用いて解析をおこなったところ,B-1およびB-2では調査したすべての組織において発現が見られたが,B-3はいずれの組織においても発現が認められなかった。このことからB-1およびB-2は従来から考えられている構成的に発現するatpbであるのに対し,B-3は組織特異性あるいは時期特異性をもつクローンであるか,偽遺伝子である可能性が示唆された。また,2002年に開花したクテガワワザサの花芽からmRNAの抽出をおこなった。
|