研究課題
本研究では、木材腐朽菌による木材細胞壁の初期攻撃に関与する菌体外でのヒドロキシルラジカルの生成を阻止する木材防腐剤を見出すことを目的とした。このため、鉄の還元抑制能をもつキレーターを用い、木材腐朽菌の生育抑制効果を平成17年度に続いて試験した。試験の対象は、白色腐朽菌Ceriporiopsis subvermisporaが産生するceriporic acidBとその誘導体、および市販の鉄キレート剤とした。白色腐朽菌カワラタケおよび褐色腐朽菌オオウズラタケを、鉄キレーターを含浸させたブナ木片に植菌し、所定の時間培養した。本年度は、昨年度からキレーターの濃度範囲を広げて、腐朽試験を行った。菌の生育状態の観察と、腐朽後の木材の重量減少率により、鉄キレーターによる腐朽阻害効果を検証した結果、これまでに腐朽抑制効果が報告されていない複数の化合物の生育抑制効果を明確にすることができた。鉄キレーターによる腐朽阻害効果は、白色腐朽菌と褐色腐朽菌で明確な差異が認められた。白色腐朽菌でも、種によって感受性の大きな違いが認められた。このことは、キレーターの生育抑制機構が種によって異なることを示唆している。本研究では、ceriporic acidBおよび側鎖の鎖長が異なる誘導体を合成し、そのヒドロキシルラジカルの生成抑制作用を解析した。その結果、これらの誘導体によるヒドロキシルラジカルの生成抑制作用が鉄の還元抑制によることを示す知見を得た。新たに見出した生育抑制作用をもつ化合物は、防腐薬剤として利用できる可能性を秘めている。
すべて 2007
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Org.Biomol.Chem. 5・5
ページ: 840-847