(1)A.tamarense有毒株及び無毒株の比較による変異検出条件の確立 A.tamarense OF935-AT6由来有毒株及び無毒株の全RNAから発現量に差のある遺伝子をサブトラクティブハイブリダイゼーションにより選択的に増幅し、差次的発現遺伝子断片cDNAライブラリーを構築した。得られた差次的発現遺伝子断片の発現量の差及び多型の有無をRT-PCRあるいはディファレンシャルスクリーニングで確認した。有毒株で高発現の遺伝子断片2種はいずれも未知の配列であった。無毒株で高シグナルを与えた6クローンのうち、4種はcytochrome bと、2種はcytochrome c oxidase polypeptide IIIと相同な領域を有していた。これらの配列を基に両株間での変異検出条件を決定し、由来の等しい有毒、無毒サブクローン91株に適用したところ、変異の検出が可能であった。得られたAFLPパターンは多様であり、毒性との明瞭な相関はみられなかった。 (2)代謝阻害剤による毒生産及び細胞周期の制御条件の確立 培養細胞の分裂や代謝系に影響を与える薬物をA.tamarense有毒株の培養液に添加し、致死性がなく分裂を抑制する薬物を探索した。用いた18種の薬物中マイトマイシンC及びコルヒチンにおいて増殖抑制濃度をそれぞれ2μM及び2mMと決定した。これらの薬物添加系を1細胞周期またはそれ以上の期間培養し、経時的に収穫した細胞についてフローサイトメーターにより細胞周期を、蛍光化HPLCにより毒量を分析した。その結果2μMマイトマイシンC添加でA.tamarenseは通常の動物培養細胞と同様にS期にとどまり、細胞内麻痺性貝毒量は増加し続けることがわかった。一方2mMコルヒチンではG_1期にとどまり、毒量はコントロールより低いまま一定であった。コルヒチンの影響により細胞周期が停止したG_1期には毒が生産されないか、細胞周期とは無関係な何らかの機構で毒生産が阻害された可能性が示唆された。
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