(1)小笠原水曜海山の深海熱水孔から我々によって分離された超好熱古細菌Aeropyrum caminiを、85℃にて好気的に大量培養し、本菌体をフレンチプレスにて細胞破砕し、遠心分画した上清をQ Sepharoseやゲルろ過にかけヒドロゲナーゼを精製し、本酵素を触媒として水素生産系の構築をなった。まず還元剤を用いた水素生産系は、MESbuffer系にMethl viologen (MV)を加えてバイアル瓶に入れ、窒素ガス置換して確立した。酵素添加後80℃で反応し比色法により測定した結果6分後還元剤MVは全て酸化され、39nmol/mlの水素ガスが生産された。次に炭素電極を用いた水素生産系はMESbuffer系にMVを加えバイアル瓶に入れた後ブチルゴムに炭素電極を固定し、窒素ガス置換して確立した。酵素添加後80℃で反応させガスクロマトグラフィーにて水素生産量を測定した。その結果、電極水素生産系では、3.4nmol/mlの水素ガスが生産された。以上により、本酵素を用いた水素生産の有効性が証明された。 (2)A.caminiと同属のAeropyrum pernixを各地の熱水環境から分離し、培養株の粗酵素液を用いてヒドロゲナーゼ活性染色法を用いて高活性株の検索を行なった。鹿児島県山川町の沿岸熱水孔から分離した多数の株の中から、A.caminiの約7倍の活性を示す高活性株を見出した。さらに本酵素遺伝子であるAPE2213、APE2216およびAPE2219の塩基配列を比較した結果、一次構造においても高活性株と低活性株に分かれた。しかしながら、本酵素遺伝子の転写量と酵素活性の間には相関性は見られなかった。従って、本酵素の発現に複雑な成熟過程が関与していると推測された。
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