近年、PPARγのアゴニストがアレルギーを抑制する可能性が示唆されているが、この点からアレルギーを抑制する成分を見出す試みはない。また、I型アレルギーは、肥満細胞の脱顆粒に伴って放出される炎症性メディエーターによって誘発されるが、PPARγとの関わりは不明である。本研究の目的は、海洋生物からPeroxysome proliferator-activated receptorγ(以下PPAR)のリガンドを見出し、アレルギー惹起性ケミカルメディエーターの放出抑制を図ることである。 今年度は、まずPPARγ合成アゴニストであるトログリタゾンを用いて、PPARγを介した脱顆粒抑制効果についてラット由来RBL-2H3細胞及びマウス骨髄由来肥満細胞BMMCを用いて検討した。DNPに特異的なIgE抗体で感作した細胞をDNP-BSAで刺激したときの脱顆粒反応に及ぼすトログリタゾンの影響をβ-ヘキソサミニダーゼの放出を指標として調べた。さらに、ELISA法によりヒスタミン放出量も測定した。また、脱顆粒反応を惹起するメカニズムの一つである細胞内へのCa^<2+>の流入を調べるために、脱顆粒刺激後の細胞内のCa^<2+>濃度変化を測定した。その結果、トログリタゾンはDNP-BSA刺激によるβ-ヘキソサミニダーゼとヒスタミンの放出を有意に抑制し、細胞内へのCa^<2+>の流入も有意に減少させることがわかった。したがって、PPARγのアゴニストは細胞内へのCa^<2+>の流入を抑制することで脱顆粒反応を抑制することが示唆された。そこで、肥満細胞の脱顆粒反応に及ぼす影響について知られていない海洋生物特有のカロテノイドに着目し、フコキサンチン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ペリジニンについて脱顆粒反応に与える影響を同様に調べたところ、これらの海洋生物カロテノイドもPPARγアゴニストと同様の脱顆粒抑制効果を示した。今後はPPARγを介した脱顆粒抑制のメカニズムを解明し、海洋生物カロテノイドがPPARγのアゴニストとしての作用によるものかどうかを調べる。
|