我が国農業の試験研究支出(R&D)が総合生産性の向上に及ぼす影響について分析を行った。第一に、1965年から2004年までの『農家経済調査』から日本農業の総合生産性(Total Factor Productivity : TFP)を推計した。その際、生産要素の投入量を集計するために資本のユーザーズ・コストを推計した。日本農業における資本ストックとしての生産要素には、「建物」、「農業機械」、「動物」、「植物」があげられる。本研究では、これらの資本ストックを推計するために資本の実質利子率を推計した上でユーザーズ・コストを求めた。43年間で総合生産性は約1.6倍にまで向上した。年率に換算すると総合投入指数および総合産出指数は、それぞれ年率0.6%、1.9%の増加率であった。その結果、総合生産性は年率1.2%で向上したことになる。近年では総合投入指数の伸びは停滞している。第二に、こうして得られたTFPと農業の試験研究支出(R&D)との関係を単純な計量モデルを用いて分析した。農業の試験研究支出は、農業試験研究機関の人件費、管理経費、研究費、機械費、施設費、事業・普及費からなる支出項目の合計を農産物総合価格指数でデフレートして求めた。研究支出は、年率3.6%で増加していた。モデルの計測結果からR&DはTFPの向上に有意な影響を与えていたことが明らかになった。
|