研究概要 |
本研究の目的は,世界で初めてフレキシビリティ,線形性,および積分可能性の3要素を兼ね備えることに成功した代表者独自の消費者需要体系モデルを提示し,需要分析・予測の信頼性を大幅に向上させるとともに,わが国および海外の食料需要の分析と予測に応用することである.消費者需要体系モデルは,経済理論に忠実な実証分析のフレームワークを提供するモデルで,国内外の需要研究,特に食料・農産物の需要研究において最も多用されている分析方法の1つである.望ましい消費者需要体系モデルの3要素であるフレキシビリティ,線形性,および積分可能性を同時に満たすことは,理想でありながら,これまで実現が困難とされてきた.本研究のモデルは,このような否定的な定説を覆し,世界で初めて上記の3要素を兼ね備えることに成功したものである.本モデルによって,消費者行動に関する非定常時系列データを経済理論・統計理論と整合的に分析・予測することが,初めて可能となった.消費者行動の分析において,実際に入手可能なデータの大半が非定常な時系列データであるという現実に鑑みると,本研究の意義は大きく,消費者需要体系モデルの信頼性と適用可能性を大幅に広げる画期的成果となるものと期待される.さらに,わが国および海外の食料需要に関して,従来よりも信頼性の高い分析・予測結果を提示することができると考えられる.本モデルはその線形性ゆえ,相当数のパラメータを取り入れることが可能であり,それだけ多数の品目を同時に扱うことができるという点で,実用上のポテンシャルが非常に高い.また,本モデルの線形性は,日進月歩で開発されている様々な最新の時系列分析手法を適用可能とするため,将来的な発展性に富んでいる.
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