研究概要 |
平成19年度の研究実績の概要は次のとおりである. まず,消費者需要の実証研究で近年多用されているquadratic almost ideal demand system(QUAIDS)モデルの線形近似を考察した.QUAIDSモデルは,フレキシビリティ,積分可能性,一致集計可能性など,実証モデルとして優れた特徴をもっている.しかし,パラメータに関して非線形であるため,時系列解析の一般的手法を適用するのが困難である.一方,消費者需要の実証研究では,時系列データが頻繁に用いられる.このようなジレンマのために,これまで時系列データに対してQUAIDSを適切に適用する方法は存在しなかった.そこで本研究では,QUAIDSの2つの価格集計関数を近似するために,幾つかの新しい価格指数を提示した.そして,適切な価格指数と弾力性公式を組み合わせ,さらに価格指数の基準点で弾力性を評価した場合に,実用上妥当な線形近似が可能なことを,日本の食料需要を対象としたモンテカルロ実験によって示した. 次に,近年提示された逆需要システムであるinverse quadratic almost ideal demand system(IQUAIDS)の線形近似を検討した.本研究では,IQUAIDSの2つの数量集計関数を近似するために,多種の新たな数量指数を提示し,日本の生鮮食料需要を対象としたモンテカルロ実験を行った.弾力性の近似誤差の観点から吟味した結果,IQUAIDSの線形近似が十分に可能であることが示された.
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