研究概要 |
1.カーボンナノチューブ(CNT)電界効果トランジスタ(FET)を作製し、有機リン系農薬がアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の自殺基質となることを利用して、有機リン系残留農薬の迅速・高感度検出システムの構築を試みた。 2.FETは、センサ素子として機能するFET素子作製の歩留り向上を目指し、CVD法による製造プロセスの全面的見直しを行った。(i)金属多層膜触媒構成によるCNT成長密度制御、(ii)CVD成長条件によるCNT成長密度制御、(iii)触媒面積によるCNT成長密度制御、(iv)触媒形成蒸着器ロードロック室増設、(v)電極パターニング・リフトオフ工程の改善、(vi)プローブカードを用いた24素子自動計測システム導入、(vii)金属的特性を持つCNTの選択的切断、を改善することにより、導通率が12.5倍、FET特性を示す素子の歩留まりが5.2倍に向上した。 3.センサ素子作製法として、自己組織化膜を介したCNT固定化によるCNTセンサーの作製を試みた。シリコン基板上に、シラン化試薬を介してアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)のゾルゲル層を作製し、酸/過酸化水素混液で処理したCNTを選択的に固定化することで、導通率が〜100%、FET特性を示すものが〜60%の割合で作製できた。当該法により作製した素子は、再現性よくpH測定できたが、AChEを用いた農薬検出は成功しておらず、今後の課題である。 4.有機リン系農薬に関して、10ppq〜10pptの濃度領域で再現性良く電流値の濃度依存性が見られたが、カルバメート系農薬ならびに除草剤では、濃度依存性は観察されなかった。また、rAChEの代わりにヒスチジンタグ付加カルモジュリンを固定化した場合には、有機リン系農薬においても電流値の濃度依存性が消失した。本法は分光学的手法に比べ、10,000〜1,000,000倍の検出感度を示した。
|